昨年公開し、先日完全版にアップデートが完了した『Wizarga -DEMONS SAGA-』の製作振り返り記事です。
別ツールで作成していた二作の移植を含む三部作となっているため、それぞれの移植元の作品についても順を追って振り返っていきます。
2007年(ツクアド期)
ウィザーガシリーズの始まりは2007年まで遡る。
当時、カテツク界隈(家庭用RPGツクール界隈)というコミュニティに所属し、RPGツクール5(ツク5)で製作していた。
しかし、数年かけて製作していたゲームが行き詰まり、そろそろ何かゲームを完成させたくなった。
そこで目をつけたツールが、RPGツクールアドバンス(ツクアド)。
少し前に友人がツクアドでちょっとしたゲームを作っていたのを見て、ツクアドというツールがなかなかいい感じだったので、これで作ってみようと考えた。
凝り性で、ツク5みたいに色々といじれると無限に時間をかけてしまうため、制約の多いツールなら手軽に作れるはずとの目論みだ。
そうして完成したのが、Wizarga #1の元となった『Wizardry/Wizarga』だ。
2007年7月末、カテツク界隈の有志たちが代わる代わる毎年開催していたコンテストに出品した。
(ちなみに、このコンテストの主催者は、DEMONS SAGAのテストプレイをしてくれたうちの一人、こげさんだ)
製作期間については記録は残しておらず正確なことは覚えていないが、3、4ヶ月くらいで完成したような気がする。
ネットの辺境であるカテツク界隈においてもツクアドはさらにマイナーなツールであり、プレイヤーは数人だったが幸い好評を得られた。
ツクアドはツール自体に致命的なバグが存在し、フロア移動時にフリーズすることがある問題に最後まで悩まされるハメにはなったのだが…。
2008年~(ツクGB期)
2008年の4月にWizardry/Wizargaのアップデートをした後、6月半ばから新作の製作に着手した。
それがWizarga ZEROの移植元のさらに移植元となった、RPGツクールGB(ツクGB)で製作した『Wizarga -ZERO-』だ。
この年のコンテスト(2007年とは主催者が異なる)に出せればと思ったが、製作開始が遅かったため間に合わず見送ることに。
その後も年末にかけて少しづつ不定期に開発を続けていたが、2009年に入ると半年ほど完全にストップ。
2009年夏のコンテストの開催が決まった頃に製作を再開し、今度こそ完成した。
ちなみに、このコンテストは再びこげさんの主催となった。
ツクGBはマイナーなツクアドよりも更にマイナーだが、グラフィックやBGMのクオリティが非常に高く雰囲気も大変好みなツールだったので、一度作品を作っておきたかった。
プレイヤー数は前作よりさらに減ったが、こちらも独自のプレイ感により好評を得られた。
出品後、戦士系キャラが弱すぎるなどバランスに満足が行かなかったため、水面下で抜本的な調整を行っていたが、新バージョンを公開するところまでは至っていなかった。
2010年~(ツク3期)
2010年夏にはこれまた別の人がコンテンストを開催したのだが、この年はリアルやらで色々新しい動きがあったため、製作に乗り出したのが遅く、参加は見送った。
次作に取り掛かるにあたって、これまでカテツク界隈の中でもマイナーな、ツク5やGBシリーズばかりで作ってきて、ここらでそろそろプレイヤーを増やしたいとの考えが生まれていた。
そこで、カテツク界隈で最も主流なツールであったRPGツクール3(ツク3)での製作を決めた。
(この時、Wizarga SUMMONERのプロジェクトが始まったのだが、実際に日の目を浴びるまでには実に11年の歳月を要することになる)
2010年中は新作用の素材を作るだけで終わったが、そんな中、次のコンテンストは2011年の2月に開催される運びとなった。
そこで、新作はどうあがいても間に合わないため、コンテンストに間に合わせるために急遽製作したのが、ツク3版『Wizarga -ZERO- ver.3』である。
ver.3は水面下で改良していたツクGB版ver.2の移植であり、ツク3の仕様に合わせて多少パラメータをいじったり、UIをこねくり回したりしたものの、1ヶ月くらいでササっとでっちあげた。
ただ、出品時点では一応クリアはできるものの、大きなバグが残っていたり完成度が微妙だったため、真に完成と言えるまではもう少しだけかかった。
アップデート作業終了後は、SUMMONERのシナリオを構想しながら、素材作成を断続的に続けていた。
ちなみに、ver.3の公開に合わせてGB版ver.2もしれっと公開した。
おそらく、このver.2をプレイした人は、作者を除いて一人もいないのではないだろうか。
2012年~(カテツクの終焉)
2012年半ば頃、新作用の素材が一通り完成し、いよいよSUMMONERの開発に着手した。
しかし、2011年のコンテンスト以降新しいコンテンストは開かれておらず、人も減り、カテツク界隈は事実上消滅していた。
この頃にはすでにWOLF RPGエディター(ウディタ)に移行した友達が何人かおり、「コモンイベントの仕組みがツク5に似ている」などと聞かされてオススメされていた。
しかし、サンクコストを惜しんでしばらくはツク3での製作を続けていたが、次第にモチベーションを保つのも難しくなり、結局、ある程度システムを作ったところで開発はストップ。
2013年5月に意を決してウディタを触ってみることにした。
当時の成果
2014年(ウディタ移行)
実際にWizargaシリーズ移植プロジェクト(現『Wizarga -DEMONS SAGA-』)に着手したのは、2014年4月10日。
3作をまとめた作品にしようと思ったのは、まず新作SUMMONERの完成が第一ではあるが、せっかくの三部作なのに#1とZEROがほぼプレイ不可能な状態なのもどうかと思ったのが一つ。
そして、Wizardryリルガミンサーガをオマージュしようというのがもう一つの理由だ。
そのため、正式なタイトルはまだ決まっていなかったが、『~ SAGA』にすることだけは決めていた。
当然、空データですべてイチから自作したので、ウディタ基本システムのことは記事を執筆している2022年現在でもよく分からぬ。
BGMの再生やキー入力、移植元データをExcelファイルにまとめる作業などから始まり3週間ほど製作した後、GWオフ参加で集中が途切れたのを境に、一切ウディタを立ち上げることなく長い休眠状態に入った。
2016年(ウディタでの本格的な製作開始)
製作を再開したのは、2016年の3月18日のこと。
そこから1ヶ月ほど製作を続けたあと、再び3ヶ月近く休眠した。
このように、ちょくちょく数ヶ月単位で製作がストップすることもあったが、いつかのウディコンへの出品を目標に、気が向くままに断続的に製作を続けていた。
ウインドウの表示から選択肢の処理、アイテムや特技といったキャンプメニュー、コンフィグ設定などをまず作成。
次にダンジョン画面、セーブロード処理、戦闘中の処理といった順番で作っていった。
(余談だが、後に友人たちから「戦闘を後回しにするのは珍しい」などと驚かれた)
2016年内で、ダンジョン内での基本的なパーツはある程度できてきたが、まだまだで通しでプレイするには色々と足りない状態だった。
2017年
2017年に入り、タイトル画面、店などの拠点画面、戦闘終了の処理などなどを作っていき、夏頃にはダンジョンに潜って戦闘して帰ってくるという、一連のゲームの流れができてきた。
ここまでは#1のシステムを作ってきたが、8月末からはZEROのシステムの製作に取り掛かった。
とはいえ、ZEROには他シナリオに流用できない専用のシステムが多いものの、一つ一つはさほど時間はかからなかった。
マウス操作を取り入れたのは9月のこと。
これ以外にも、完成までの間に思いつきで様々な要素追加や仕様変更を行っており、この無計画さが開発期間がここまで伸びた理由の一つとなっている。
2018年
2018年は、引き続きZEROの移植に必要なシステムを追加したり、移植元からのデータの打ち込み、機能追加やリファクタリングに時間を費やしていた。
また、テストプレイ用のデバッグコマンドの実装なども進めた。
9月には、ずっと悩んでいたBGMの候補が見つかった。
できるかぎり本家Wizardryシリーズのようなクラシックオーケストラ風のBGMを使いたいと思っていたので、イメージ通りの良い素材集が見つかってテンションが上がる。
この年は2、3ヶ月作っては1、2ヶ月休みといった感じで、着実に進んではいるものの、ちょくちょく手が止まっていた。
2019年
2019年に入り、いよいよ新作SUMMONERパートのシステム開発に取り掛かった。
ダンジョンでの視界の制限、パーティ編成、など。
5月下旬から5ヶ月に渡って製作を休止(本格的に開発を始めた2016年以降、最長の休眠期間だった)していたものの、10月にとある用事で友人に会いに行った際、ウディタ開発者のSmokingWOLFさんや、ウディタ勢の皆さんとリアルで会う機会に恵まれた。
これにより完成への思いを新たにし、2020年のウディコン出品を目指して開発を再開した。
ただ、ここからはしばらくは、素材の作成や戦闘エフェクトの設定、ゲーム内テキストを書いたりしていたので、ウディタの起動時間自体は減っていた時期だ。
2020年
2020年に入っても、引き続き素材やテキスト関連の作業を続けながら、細かいシステム修正を行っていた。
4月半ば頃からGWにかけて、SUMMONERのシナリオ関連のテキスト第一稿を書き上げた。
コロナ禍に突入してオフ会がなくなり時間はできたのだが、筆が乗らず苦戦した。
5月になって突如、前衛or後衛を対象としたグループ範囲の呪文を思いつき実装。
その他、完成版では最終的に削除することになるシステムの実装も行うなど、SUMMONERのシステムや仕様については、この後も完成までずっと試行錯誤を続けていた。
6月から7月上旬にかけては、イラスト素材をひたすら描いていた。
最初の1週間でテロップシーン用のイベントグラフィックを描き、丸1ヶ月でモンスターグラフィックをほぼ描ききった。
後に足りないものを追加で描いたり、クオリティが低すぎるものの手直しをしたりしたが、ほとんどはこの1ヶ月強で描き上げたのは、我ながら鬼気迫っていたと思う。
この時点でウディコン締め切りまで2週間ほど。
後回しになっていた細かい部分をひたすら作り込み、SUMMONERのダンジョンも作っていく。
しかし、結局は明らかに時間が足りず、2020年の参加は見送らざるをえなくなった。
そこからは第12回ウディコン作品のプレイなどし、4ヶ月の充電期間を経て、11月から製作を再開。
SUMMONERのモンスターパラメータを設定し、いよいよテストプレイをしながらバランス調整や仕様変更、デバッグを繰り返す段となった。
2021年(ウディコン出品)
年末年始の休みで溜まっていた動画を見ようと、アマプラ加入などでアニメや映画を見漁る。
結局、休みが明けても動画を見続けて製作がストップ。
2021年早々に1ヶ月出遅れてしまった。ナンテコッタ
昨年末から引き続き、テストプレイしながら調整と修正を繰り返すが、ここで思いの外修正箇所や仕様変更点が多く、サボらず製作を続けるもかなり時間がかかってしまった。
ダンジョン内で起こるイベントのテキストなども書きながらだったり、「作りながら考える」時間が長く、頻繁にテストプレイの手が止まっていたというのもある。
結局、友人にテストプレイをしてもらったのは出品の2、3日前になってから。
インターフェースの分かりづらい部分や、SUMMONERの理不尽な難しさになっていた部分などの指摘をもらい、急いで修正していった。
中でも、ZEROのラスボスが配置されておらず、クリア不可能になっていたのは面食らった。
(移植作については自分で通しテストをしていなかったのだ)
SUMMONERの魔道Xの製作は進めていたが、EXダンジョンや各種図鑑も含め、もう到底間に合わないため、残念ながらアプデでの追加という形を取ることになった。
締め切り日はとにかく出品準備に費やした。
同梱テキストや、スクリーンショットや紹介文などを急ぎ作成していく。
なお、このときに思いつきでゲーム部分を修正したことが原因で、初期バージョンでは致命的なバグが発生してしまったりもしたのはご愛嬌。
そして、いざ出品のためにゲームデータを暗号化、となった段階でトラブルが発生。
BGMファイルを暗号化すると、”ファイルファイルパスを指定してBGMを再生”するコマンドが使えないことが判明したのである。
(システムDBは使わず、BGM情報をINIファイルにまとめて管理していた)
この時すでに22時を回っており、急ぎシステムDBにて直接指定する標準的な方法に作り直した。
問題が発覚したときは焦って血の気が引いたが、何とか間に合って本当に良かった。
あとがき
その後は皆様ご存じの通り、第13回ウディコンにて無事公開され、カウントダウン発表すべり込みの総合12位を得ることができました。
初期バージョン公開時点で、ウディタでの製作着手から7年、SUMMONERの最初の構想からは11年、移植元のシリーズ第1作目からだと実に14年も経っています。
本当に長い旅でしたが、こうやって無事世に出すことができ、感動もひとしおです。
未実装だった要素についても、2022年初頭のアップデートにて完全版を公開し、ようやく肩の荷が下りました。
今は充電期間だけども、次回作の構想はすでにあるので、可能なら2023年には完成させられたらイイナ☆
製作後記その2は、作品自体についての所感や裏話なんかの予定です。
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